先日、下記のようなニュースがSNSやWebニュースで話題になったのをご存じの方も多いと思います。
「ディズニー、リゾート内の死亡訴訟を『ディズニープラス規約』根拠に取り下げ求める。裁判外解決を主張」
詳細は割愛しますが、話題になっている点を単純化して話しますと、ディズニーリゾートが運営する施設内での事故(不法行為)に関する訴えを被害者側が提起したところ、加害者側のディズニーリゾートは、①以前被害者側はストリーミングサービスのDisney+に加入しており、②そのDisiny+の利用規約によれば、ディズニーとユーザー間で生じたいかなる紛争も裁判ではなく仲裁(裁判外紛争解決)を利用して解決することを定めた裁判放棄条項がある。③したがってこの訴訟提起は無効である、と主張しているそうです。
米国で本件のこのような主張が通るかどうかはさておき、わが国でもこのような「紛争が生じたときには裁判所による解決ではなく、私人(仲裁人)の裁断に服する」という合意をすること自体は可能です(仲裁法13条以下)。このような合意があれば、合意に反してされた訴えの提起は、請求適格を欠き、却下されてしまいます。
そして、仲裁による紛争解決には、一般的には非公開・迅速・コストなどの点で訴訟による解決にはないメリットもあるとされており、B to Cサービス提供企業としてはそのサービス利用規約に仲裁合意条項を入れておくこともよくあります。
では、日本法下で、色々なサービスを展開する企業が、1つのサービスの利用規約中の仲裁合意条項を根拠として本件のような主張ができるでしょうか?
結論からいえば、難しいものと考えられます。
将来の紛争を対象とする仲裁合意が可能であるとしても、それは「一定の法律関係」に関する紛争でなければならないのです。もし将来の紛争について無限定な仲裁合意を許してしまうと当事者にとって予測を超えた不利益が及ぶかもしれない為です。(かかる合意は、民事訴訟の原則である処分権主義・弁論主義の範囲内である場合に限り認められるということです。)
したがって、仲裁合意の条項を作るにしても、「当事者間で将来生じることがあるすべての紛争は、日本商事仲裁協会による仲裁により解決する。」とか、「当事者間の全ての取引関係から生じる紛争は、日本商事仲裁協会による仲裁により解決する。」といった条項は無効になる可能性が高いものといえるので注意が必要です(小島武司=高桑昭編・注釈と論点仲裁法(青林書院 初版)44頁参照)。
仲裁合意条項を含め、有効な契約条項・契約書の作成・審査には、経験豊富な法務パーソンの知見が必須といえます。契約書または法務サービスのことでお困りごとがあれば、
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